渡邉 孝司先生からのコメント
1)交換前のクランク回転による平均圧縮圧力は、VW、日産バネット、Range Roverの順に1.353、1.328、1.258Mpaで、交換後にSOD-1添加後の平均圧縮圧力は同様に1.355、1.343、1.270Mpaを示した。SOD-1添加後の圧力上昇値は、各々0.015、0015、0.013Mpaでこれらの圧力上昇率は各々1.1、1.1、1.0% であった。
2)したがって、SOD-1添加により僅かではあるが圧力上昇に効果があることが認められ、ピストンリングとピストン間およびピストンとシリンダ間の油膜保持向上による密閉効果が証明された。ただし、この効果はクランキング回転時の現象であり、エンジン運転中の圧縮回転速度は可なり速くなり、圧縮圧力は約2.00~2.10Mpaと想定され、添加後の圧力上昇率は先に述べた油膜保持向上による密閉効果により約1.5%程度が期待できる。
3)SOD-1添加後の平均圧縮圧力の上昇率からオットーサイクルの実機関サイクルに相当するポリートロープサイクルと仮定し、ポリトロープ変化によるポリトロープ指数nを、n=1.30~1.32(圧縮時)、1.28~1.30(膨張時)からn=1.30(圧縮時)を適応して正味熱効率ηを求める。
その結果、圧縮比ε=10、圧縮開始圧力p1=0.1MpaおよびSOD-1添加後の圧縮圧力上昇率を1.11%(1.0111)として正味熱効率ηを求めると、
SOD-1添加無でη=0.499(49.9%)に対してSPD-1添加有でη=0.510(51.0%)となり、SOD-1添加により熱効率は(0.510-0.499)%=1.1%の増加となる。
4)SPD-1の添加はシリンダとピストン間のみならず、エンジン全体の回転摺動部のカムシャフト、バルブ系、クランク系や各種歯車系におけるコンタミ類の清浄作用による油膜保持・形成の能力がかなり向上することから、総合的には摩擦損失の低下にかなり影響を及ぼすものと見られる。したがって、エンジン内の摩擦損失の低下が実出力向上や燃費率低下により効果が期待できるものと考えられる。